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2017/06/02

人形感謝祭祝詞1 準備

 通常の文章と同様に、祝詞作文においても実際に草稿をつくりはじめるより前に、ある程度の準備が必要でしょう。そこで、準備段階としてまずどのようなことを考えたのか、そのあたりからお話しすることにします。

最初に、この祝詞は、宮司としていま御奉仕している神社に赴任するより前に、だいたいこのように祭事を執り行ってきたのだろうと想像して、作文したものです。

年一度行われてきた祭祀ながら前回までに奏上された祝詞は残されていませんでしたし、以前の祭式次第を誰かに聞ける状況にはありませんでしたが、祭場の写真、種々の文書などを見ることができたこと、何よりも以前奉職していた神社において、同様の祭事を行っていたので、それほど作文に頭を悩ませた記憶はありません。

 変更点として第一に、これまで「人形供養祭」という名称であったのを、「供養」を嫌って「人形感謝祭」としました。もちろん「供養」が純粋な仏教の用語だからです。仏教の教学上では厳密な意味での「供養」は誰にでもできることらしいのですが、詳しくないのでよく分かりません。それはともかくとして、寺で行われているような「供養」が行われていると誤解されては困るという思いもありました。

この変更について祭事の前後に、誰かから質問されたということは特にありませんでした。しかし、当日取材にきていた人から祭事の趣旨について「集められた人形を悲しんで、慰めるものなのか」と問われましたので、葬儀に類するものと、これまでの間ずっと勘違いされてきたきらいはあります。

変更点の第二として、祭場は従前と同様、祖霊殿前と決めたのですが、かつて行われていたときの写真を見ますと、祖霊殿の御扉前に神籬が置かれ、その手前に饌案が置かれていました。このことから、何らかの神霊をお招きしての祭祀を行っていたことは想像できましたが、その後方には、神社の神道会の方々のみたまさんをお祀りしています。この状況がじぶんではすっきりしないような気がしましたので神籬祭祀を取りやめ、祖霊殿のみたまさんをお祀りする対象としました。

つづいて、どのような目算をもって草稿を書き出したのか、より具体的なところをお話しします。

もっとも、あとで校正しますから、きっちり決めず、おおまかなところまで。結果が異なってもよしとします。

 まず構成について、冒頭部につづき、祭祀のようす、神饌について、また玉串を捧げて拝礼する旨を申してお聞き届けくださるように、また人形の魂をお導きくださるようお願いして、結尾部に至る……と、現代祝詞によく見られるようなかたちが穏当だろう、と考えました。

 つぎに分量について、通常、祝詞は七折半に折り、最初と最後の部分は空白にしますから奉書紙上には六つ、書くスペースがあることになります。したがって行数は六の倍数になります。一行あたりの字数を多くする手もありますけれども、ぜんぶで六行、もしくは十二行では今回の場合、少ないような気がしましたので、十八行としました。一行あたりの字数は宣命書で二十五字程度。原稿用紙一枚ちょっとになります。

 さらに、上記の構成に、どれくらいの分量を割り振るかを決めました。

 全体のバランスがとれれば、多少の相違があってもよいくらいに考えまして、これも、ごくおおまかなものです。


ここでひとまず決めたのは、ひとつめのスペースに冒頭部、ふたつめから三つめで祭祀のようす。四つめでお供えや拝礼の旨を申し、お聞き届けくださるようお願いし、五つめから六つめで人形の魂をお導きくださいますようにお願いする……として、いよいよ草稿にとりかかりました。

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